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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(あ)1418号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

当審における訴訟費用は、被告人の負担とする。

被告人本人の上告趣意について。

所論は事実審の裁量に属する刑の量定を非難するに止まり刑訴四〇五条の上告適法の理由に該当しない。また、記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

弁護人前野順一の上告趣旨第一点第二点について。

所論第一は控訴審が覆審であって事件の実体について真実発見のため再度事実の取り調べをなすべきことを前提として主張するものである。しかし、現行法上控訴審はいわゆる事後審として認められているのであって控訴審における事実の取調は、第一審判決の当否を判断するに必要な範囲にかぎられるのであり、その必要の有無は刑訴三九三条一項但書の場合を除き裁判所の裁量に委ねられているのである。それ故所論第一はその前提において採用できない。そして裁判の審級制度については、憲法上同八一条の場合以外は法律を以て適当に定め得るものと解すべきことは、当裁判所判例の屡々示したところである。されば現行刑訴法が控訴審を覆審とせず事後審とし、前示の如く規定したからとて、これを目して違憲であるということはできない。論旨第二の理由なきことは既にこの点において明白である。

よって同四〇八条、一八一条一項に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔)

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